オスとメス、ペアの猫さんの場合、お留守番中はシッターに対しての反応や接し方が
対照的になることも多く、お互いにそのバランスを補って一緒に暮らしているんだな、
と感じることがあります。
飼い主さまが「その辺から拾ってきた」キジ白ブチの「ミウ」君(雄/2歳)と
「その辺で貰ってきた」ハチワレの「ウタ」ちゃん(雌/1歳)。どちらもバンコクの
ストリート生まれ、厳しい環境を生き抜いて来たこともあり警戒心が強く、
ご家族も初めての長いお留守番を心配していらっしゃいました。
わたしがお伺いするお宅の中では少数派のベランダ出入り自由、
窓の外には緑が広がり、都会のエアポケットのような、
静かで落ち着いた環境にお住いのミウ君とウタちゃん。
打ち合わせの時には、2匹ともわたしにとても驚いた様子で完全にフリーズしてしまい、
ダッシュでお部屋を駆け抜けると、すぐに隠れてしまいました。
初日は自ら近寄ってわたしの匂いを嗅いでみたり、こちらの様子を離れたところからじーっと
窺っていました。日を重ねるうちに、ご飯待ちの様子を見せるようになり、
そのうちに尻尾をピーンと立ててスリッとご挨拶すると、 初日は猫じゃらしに驚いて渾身のシャー!!
をしていたミウ君も、3日目を過ぎる頃には飛んだり跳ねたり、元気に遊ぶようになりました。
一方のウタちゃん。 初日はどうにかして外に逃げてしまったのでは、と心配になって
しまうくらい中々見つからず、やっと見つけた隠れ家はソファの下の布張りの中。布に穴を開けて、
出入り口にしていました。すっかり怯えてしまったウタちゃんは、その後も穴ぐらへの籠城を
決めたらしく、訪問中に姿を見せたのは3回だけでした。
それでも好物のかつお節作戦を決行すると、なんと布の膨らみがが少しずつ出入り口の
おやつを目掛けて近付いています!ソファの下に身を屈めて布越しにナデナデ、
静かに声を掛けていると、ふにゃっとして温かい身体からゴロゴロの振動が伝わってきたり、
たまにか細い声で鳴いて反応してくれることもありました。
お留守番も終盤に近付くと、小さな穴から可愛いピンクの鼻を覗かせるようになり、
かつお節を穴の前に近付けてみると、小さな口を出して暗闇へ獲物を引きずり込み、
布越しに「シャリッシャリッシャリッ」と恐ろしい音が聞こえてきました。
その小さな穴に指を入れてちょっかいを出して見ると、手で軽くバシっと何度も反撃があり、
穴ぐらの出入り口近くに尻尾を見せていたので、指で軽く摘んでみると、
尻尾をパタパタさせたり、その先っぽを何度もわたしの手に触れてみたりして、
どうやら遊びのお相手をしてくれている様子にホロリとしました。
実は、普段はウタちゃんの方がやんちゃで、ミウ君の方が遠慮して大人しい性格とのこと。
お留守番中は、ミウ君がカリカリ窃盗事件の嫌疑を掛けられるほどのびのびと振る舞い、
元気に遊んでいるのを、穴ぐらに身を潜めていたウタちゃんは、さぞかし苦々しく思っていた
ことでしょう。
ご家族がお戻りになると、最初は警戒して隠れていた2匹もすぐに出て来て、
ウタちゃんは初めてお宅にやって来た時のようにずっと鳴き続け、
ミウ君も譲らずに足元に付いて回っていたそうです。
人見知りの猫さんたちにとっては大災難のお留守番ですが、
名残惜しいシッターとしては、「きっとまた元気な姿で再会出来ますように」 と
心の中で願っています。