2015/03/11

キャットダディ/猫と話をする人


やまねこ社が最近読んだばかりの、ネコに関する新刊2冊を紹介します。  


via my cat from hell
















                                               

ぼくが猫の行動専門家になれた理由 /ジャクソン・ギャラクシー 著(白井美代子訳)

アニマルプラネットの番組『猫ヘルパー〜猫のしつけ教えます/My Cat From Hell
(日本語の番組タイトルが残念です...)でお馴染み「キャットダディ」こと、
ジャクソン・ギャラクシーの著書です。
 一見、コワモテでイカついルックスのキャットダディが、
家族が手に負えなくなった(時に凶暴な)猫ちゃん達を相手に「ハ〜イ、パンプキン♡」と
声色を変え物腰柔らかく接したり、情深くて涙もろい一面を見せたる
どんな人物なのか彼自身のことにも興味を持っていました。

動物保護施設で15年間働いていた経歴を持つジャクソンは、
もとは演劇を学び、ミュージシャンとしても活動しています。繊細で感受性豊かな面が
災いしたのか、保護施設で働く前には、ドラッグやアルコール、過食などの
あらゆる依存症や経済問題を抱えて、人生のどん底の状態も経験していたようです。

荒んだ生活から抜け出す為に、動物保護施設で得た過酷な仕事......
限られたスペースに詰め込まれた、触れ合う時間すら取れない大勢の動物達の世話に
明け暮れ、時にはお墓の穴を掘り、安楽死の手を下す事も。「引っ越すから」
「結婚するから」などと身勝手な言い訳をしながら、施設にペットを捨てる
心ない人々が絶えず訪れ、理想を掲げ現実を見ようとしない動物愛護家からは
安楽死を否定される。施設で働くスタッフや獣医達は、動物を愛するが故に疲弊し、
精神的にも追いつめられ行く様子が描かれています。

そんなある日、施設の前に捨てられた一匹の雄猫が、ジャクソンの「運命の猫」になります。
事故による骨盤骨折から奇跡的に復活し、「ベニー」と名付けられますが、
環境の変化に適応出来ず、次々と問題を引き起こすベニーは、
人生に混乱し、苛立っている神経質なジャクソンの姿とも重なります。
ベニーとじっくり向き合い、行動の背景にあるものを分析し、
解決方法を模索する手法は、その後「施設に捨てられる猫を1匹でも減らしたい」という
真摯な思いと共に結実して行きます。
病気を患い、衰えて行くベニーとの最期の絆には、胸に迫るものがありました。

現場での様々な経験(ちょっとニューエイジ寄りの匂いもあります......)元に
飼い猫との付き合い方を伝授していますが、

  あなたの“ベニー”への愛情をどんどん広げて、すべての動物に与えてほしい。 
  家(里親)を必要としている猫たちを、あなたの人生に迎えてほしい。

という彼のメッセージは、わたしもしっかり受け止めました。

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猫について知識を得る為の情報を発信、支援している慈善団体
『インターナショナルキャットケア』の代表で、生物学が専門の著者による本です。
原題は『THE CAT WHISPERER(猫と話をする人)』となっています。

スリスリ♡


















猫の心理や、行動の背景にあるものを理解することが大切であるという主張は、
前述のキャトダディと同じスタンスですが、この本では科学的な根拠から
論理的に考察、解説しています。 

「現代生活の中で、猫が私達により近いところで暮らすことをやむを得ず強制してきた」という視点は、
イエネコをつい擬人化してしまいがちな、わたしたち飼い主側も再認識する必要がありそうです。
猫と暮らす人であれば誰でも感じる、「実は人間が猫にしつけられているんじゃなのか......」という
疑問には、間違いない!と著者も太鼓判を押しています(笑)。

スイスで行われたある調査によると、「完全室内飼いの猫の飼い主は、猫が自立した
生き物であることを認めたがらない」傾向があるそうです。
シッターの際に、初めてのお留守番にご心配していた飼い主さまが、元気に遊んで、
いつも通りの猫ちゃんの様子を見て安心する反面、「私を忘れてしまったのではないかしら......」と
複雑な心境になった、と何度かお伺いした事がありますが、
わたしも同じ飼い主としてお気持ちは良く分かります(笑)。(例外として、分離不安の症状が
見られる猫もいます)

近年、日本では完全室内飼いが推奨されていますが、著者の住むイギリスでは、
家と外を自由に出入りしている飼い猫が多く、人と猫との関係も
日本とは少し違うように感じました。 
放し飼いには様々なリスクも伴いますが、飼い主を前にした家猫としての振る舞いと、
外に出て本来の野生を発揮する2つの面を持っているということは、
わたしのネコへ対する興味が尽きない理由のひとつです。