2014/07/04

汎動物学


















人間と動物の病気を一緒にみる : 医療を変える汎動物学の発想

ヒトと動物の「違い」ではなく、「共通」の部分に注目して、ヒトと動物の境界線を取払い、
あらゆる生きものの健康を向上させるという、新しいアプローチ「汎動物学」についての本です。

特に興味深かったのは、コペンハーゲン動物園の給餌方法。動物園に来た家族連れが、気分を
害してしまう様な「死骸を与える給餌法」を採用しています。
他の動物の体を丸ごと与えられた肉食獣は、より健康的で、行動面にも好ましい変化が現れている、
とコペンハーゲン動物園の獣医師は主張していますが、多くの栄養学者達がその効果を認めては
いるものの、特にイギリスや北アメリカの動物園では反対世論が多く、この給餌法は採用されて
いないのだそうです。この給餌法から、ハイイログマのダイエットを紹介、そしてこの本の筆者は
なんと、そこからヒトの食生活と肥満についてのヒントを得ています。
動物の健康や幸福度を向上させる為に、生息環境を修正する「環境エンリッチメント」についての
言及もありました。

「野生と文明を渡り歩く生き物」(カ...カッコイイ♡)とも称される現代のネコですが、 私が
観察する限り、毎回同じ場所で、お皿の上にお馴染みのカリカリを出す度に「またこれですか......」
とでも訴えるような表情や仕草をすることがあります。野生と同じ食スタイルを!という訳には
行きませんが、与えられた環境の中で、室内飼いのネコの給餌法にも、胃と心を分離させない、
少し刺激を与えるような工夫があると、よりネコ様達の満足度が増すのかも知れませんね。

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前述の動物園の給餌法にショックを受けた方には、最近DVDで見た映画「ライフ・オブ・パイ」をお勧めします。
少年の冒険と信仰を描いた一元的な物語と思いきや、遭難する船で動物達との「食べる or食べられる」のシュールな極限状態に置かれ、最後にはどんでん返しまで!
見返してじっくり考えたくなる様な示唆的な言葉や、美しいシーンも沢山あり、とても深い物語でした。